【PISA2025】「日本、3分野すべてOECD加盟国中1位」という結果、そして「国・地域」の違いとここ10年の推移

2026年9月8日、OECD(経済協力開発機構)が3年に一度実施する国際学力調査「PISA2025」の結果が発表された。「日本、3分野すべてOECD加盟国中1位」という見出しが各メディアで報じられたが、まずはその結果の中身を確認し、そのうえで報道でよく見る「国・地域」という表現の意味、そしてここ10年の日本の順位の推移を順番に見ていきたい。


1. 日本の結果

PISA(Programme for International Student Assessment、生徒の学習到達度調査)は、義務教育を終える段階にあたる15歳の生徒を対象に、学校で身につけた知識や技能を実生活のさまざまな場面でどれだけ活用できるかを測る国際調査だ。「読解力」「数学的リテラシー」「科学(2025年からは科学コンピテンシー)」の3分野を中心に、原則3年ごとに実施されている。

PISA2025には世界91か国・地域から約76万人が参加し、日本からは全国の高校・中等教育学校後期課程・高等専門学校の1年生183校、約6,500人が2025年6~8月に調査を受けた。今回の調査から、紙と鉛筆を使う筆記型ではなく、完全にオンラインのコンピューター使用型調査に移行している。

日本の結果は次の通りだった。

分野日本の平均得点全91か国・地域中の順位OECD加盟38か国中の順位
科学コンピテンシー538点5位1位
読解力503点4位1位
数学的リテラシー525点5位1位

3分野すべてでOECD平均を上回り、OECD加盟してる国の中では初めて3分野すべてで首位となった。ただし全参加国・地域で見ると、上位には中国(北京・上海など)やシンガポールといったアジア勢が並んでいる。


2. 「国・地域」とは何を表すのか

ここで気づくのは、「全参加国・地域中」の順位と「OECD加盟国中」の順位が、同じ日本の結果なのに大きく異なっているという点だ。これは謎でも誇張でもなく、PISAという調査の設計そのものに理由がある。

なぜ2種類の順位があるのか

PISAはOECDが主催する調査だが、参加できるのはOECD加盟国だけではない。OECDに加盟していない国や地域も、費用を負担することで自由に参加できる仕組みになっている。2025年調査では91の国・地域が参加した一方、OECDの加盟国は38か国にとどまる。参加者の半数以上は非加盟国・地域ということになる。

そのため、PISAの結果は「全参加国・地域の中での順位」と「OECD加盟国の中での順位」の2種類が公表される。前者はその回の調査に参加したすべての国・地域を含む幅広い比較、後者は先進国クラブとも呼ばれるOECD加盟国どうしの比較、というイメージで捉えるとわかりやすい。日本の場合、全参加国・地域の中では5位や4位でも、OECD加盟国の中ではすべて1位になっているのは、上位に入っている国・地域の多くがOECD非加盟だからである。

「国」だけでなく「地域」が入っているわけ

もう一つ、報道でよく見る「国・地域」という表記にも理由がある。PISAの参加単位は、必ずしも主権国家(独立した「国」)とは限らない。実際には、次のような「地域」単位の参加者が含まれている。

  • 香港(中国):中華人民共和国の特別行政区として、中国本土とは別に単独で参加している。
  • マカオ(中国):香港と同様、特別行政区として単独で参加している。
  • チャイニーズ・タイペイ(台湾):国際的な調査では「台湾」ではなく「チャイニーズ・タイペイ」という名称で参加している。
  • 中国本土の一部の省・直轄市:中国は国全体としてではなく、北京・上海など特定の省・直轄市を代表として参加させている。これまでの回によって組み合わせが異なり、上海単独だった回や、北京・上海・江蘇・浙江の4地域(通称「B-S-J-Z」)で参加した回などがある。

つまり「中国が世界トップ」という報道を見た場合、それは中国という国全体の平均ではなく、中国の中でも特に教育水準が高いとされる大都市部を選んで代表させた結果である可能性が高い。国全体の実力を反映した数字とは性質が異なる点には注意が必要だ。順位を読み解くうえで知っておきたい重要な前提と言える。例で示すと、日本でいう東京や大阪、名古屋だけの試験結果を表している。なぜこういうことが起きるのかというと、日本ではどの地域も試験を受けるための環境や設備が整っているが、ほかの国では環境や設備が整っておらず試験自体を受けることができない場所もあるためである。


3. ここ10年の結果の推移

日本の順位は、実は毎回同じように高かったわけではない。ここ10年(2015~2025年)の推移を見ると、上下動を繰り返していることがわかる。

分野2015年2018年2022年2025年
読解力(順位)8位15位3位4位
数学的リテラシー(順位)5位6位5位5位
科学(順位)2位5位2位5位
読解力(得点)516点504点516点503点

※順位は全参加国・地域中のもの。参加国・地域数は年によって異なる(2015年72、2018年79、2022年81、2025年91)ため、単純な得点比較とあわせて見る必要がある。

この10年で特に目立つのが、2018年の落ち込みと、2022年の回復である。

2018年:過去最低の読解力15位 2018年調査では、読解力が15位に沈み、当時の日本にとって過去最低の順位となった。この結果は「ゆとり教育」の見直し論議とも絡めて大きく報じられた。ただし2018年調査は紙と鉛筆からコンピューター使用型調査へ移行して間もない時期で、当時の日本は授業でのICT機器の活用率がOECD加盟国中で最下位という状況だった。使い慣れないコンピューター上での出題形式が、結果に影響した可能性も指摘されている。

2022年:コロナ禍を経て過去最高水準に回復 2022年調査では、読解力が3位(516点)に回復し、比較可能な指標の中では過去最高水準となった。数学・科学も含め3分野すべてで前回から得点が上昇している。この背景には、他国に比べて休校期間が短かったこと、GIGAスクール構想によって1人1台端末の配備が進み、授業でのICT活用率がOECD平均を上回る水準まで上昇したことなど、複合的な要因があったとされている。

2025年:高水準を維持しつつ、読解力はやや後退 そして今回2025年調査では、科学・数学は前回とほぼ同水準(統計的に有意な差はなし)を保った一方、読解力は503点まで下がり、2018年の落ち込みほどではないものの、2022年の回復基調からはやや後退する形となった。

つまりこの10年を通してみると、日本の順位は一直線に上がり続けているわけでも、下がり続けているわけでもない。2018年の落ち込みと2022年の回復という大きな波を経て、2025年は「高い水準を維持しながらも、読解力にやや陰りが見え始めた」という局面にある、という見方ができる。

ちなみにPISAは比較的「経年比較できるように設計された調査」ですので、年ごとの点数の比較をしてもそこまで見当違いな見方にはなりえません。ただし、単純な点数の上下だけで「学力が上がった/下がった」と結論づけるのは危うい、というのが実態に近いです。


まとめ

PISAは「学校で習ったことを実生活でどれだけ使えるか」を測る国際調査であり、3年ごとに実施されている。順位を見るときは、①全参加国・地域中の順位なのか、OECD加盟国中の順位なのか、②「国」だけでなく都市や特別行政区といった「地域」単位の参加者も含まれていること、③直近1回の結果だけでなく、過去10年程度の推移の中でどう位置づけられるか、の3点を踏まえておくと、報道されている数字の意味がより正確に見えてくる。


出典:文部科学省・国立教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」各年度公表資料、OECD「PISA 2025 Results」